H.P.ラヴクラフト

ハワード・フィリップス・ラヴクラフト(Howard Phillips Lovecraft)は、1890年8月20日にアメリカ合衆国ロードアイランド州プロビデンスに生まれ、1937年3月15日に同地で死去した怪奇小説家である。
彼は20世紀初頭に活躍した作家であり、特に「クトゥルフ神話」に代表される独自の宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)の創始者として知られている。ラヴクラフトの作品は、伝統的なゴシックホラーからの影響を受けつつも、宇宙の広大さと人間存在の無力さを主題に据えた点で独自性を持つ。その作風は、冷たい科学的記述と古風な文体、また無名の神々や禁断の知識を扱う神秘的な世界観によって特徴づけられる。
生前はパルプ雑誌を中心に短編を発表していたが、当時の文壇からは広く評価されることはなかった。だが死後、友人や弟子たちによってその作品群が再評価され、特に1960年代以降に世界的な人気を博すに至った。今日では、クトゥルフ神話は多くの作家、映画、ゲーム、音楽作品に影響を与えるなど、現代のサブカルチャーにも深く根を下ろしている。ラヴクラフトは、幻想文学における最も重要な作家の一人と見なされている。